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新入生の皆様へ


 日本大学危機管理学部、ならびに大学院危機管理学研究科の新入生の皆さん、ご入学まことにおめでとうございます。
日本の象徴的な花、日本大学の校章である桜が満開のこの日にこの桜の花が皆さんを歓迎しているようです。
 皆さんがこの4月から学ばれる日本大学危機管理学部は2016年4月に創設され、また大学院危機管理学研究科の博士前期課程は一昨年2023年4月に、博士後期課程はこの4月から開校された、日本で初めての社会科学系の危機管理学部であり大学院です。
 この危機管理学部では入学生の皆さんが記念すべき10期生となられます。
 世界にたくさんある大学、学部、大学院のなかで、よくこの危機管理学部を選んでくださいました。本当にありがとうございます。この危機管理学部を立ち上げてこれまで創り上げてきた、全教職員の一人として心より御礼を申し上げます。

 私たちは今日この日、この場所ではじめて出会いました。
皆さんは今日からこのキャンパスでたくさんの友人をつくり、たくさんの先生方と出会うことになります。
 ここには必ず何かの縁や、志があったからこそ、私たちはこの同じ場所、同じ時間に出会ったのだと思います。
 新入生の皆さんと同じように、私も大学や大学院で人と出会い、ともに学び、ともに遊び、ともに語ることで、自分自身の人生を歩んできました。ともに生きる「共生社会」、ともに創る「共創社会」、ともに助け合う「共助の精神」が、
現代社会に求められています。
 この「ともに」という言葉の英語の接頭語が「コム」であり、私たちにとってはこの大学、キャンパスこそが学生仲間や先生方とともに学ぶ「コミュニティ」であり、そこで皆と語り合い、交流することが「コミュニケーション」であります。どうか皆さん、この大学というコミュニティで人とのコミュニケーションを大事にしてください。それが皆さんの人生をいろどり、楽しくするネットワークとなるに違いありません。

 日本大学の学祖・山田顕義が当時の幕末で仲間を作ったコミュニティは長州藩の松下村塾でした。山田顕義学祖は長州藩の武士だけが学べる藩校、明倫館で学びながらも、その古い学びに飽き足らず、武士ではない農民や商人の若者が広く集まり、自主的に学習していた松下村塾に通うことで、人生の師匠となる、吉田松陰先生に出会いました。この松下村塾には、武士だけでなく、農民や商人、医者など身分による差別なく多様な職業につく若者たちが集い、学び、対等に、平等に、そして自由に政治や世界を語っていました。山田顕義学祖はそこで、のちの明治維新後に、明治政府をつくり、日本の近代化を支えた伊藤博文や山県有朋らと出会っていますが、この伊藤も山県も武士ではなく農民、足軽の出身でした。
 まさにこのように自由で自主的で主体的な学びができる松下村塾こそ、山田顕義学祖がつくった日本大学の「自主創造」の理念に満ちており、そこには私たちが目指すべき、自由とダイバーシティ・多様性がありました。
 吉田松陰先生が安政の大獄で大老井伊直弼に処刑される前に、弟子の山田顕義学祖に送った言葉が、漢詩として今も残っています。

 「立志尚特異 俗流與議難 不思身後業 且偸目前安 百年一瞬耳 君子勿素餐」

 「立志は特異を尚(たっと)ぶ、俗流はともに議し難し、身後の業を思はず、且(か)つ 目前の安きを偸(ぬす)む、百年は一瞬のみ、君子 素餐することなかれ」

 その意味は、
 「志を立てるとき、人と自分が異なることに恐れてはいけない。安易に人と同じように合わせて生きるべきではない。死んだ後のことなど考えず、目の前にある安楽にふけって怠けてはいけない。なぜなら、百年は一瞬に過ぎない。若者よ一日一日の学びを怠けないでほしい。」というものです。

 この吉田松陰先生の言葉を、危機管理学部、そして大学院危機管理学研究科の新入生の皆さんに送りたいと思います。幕末から明治維新にかけて混乱の時代、激動の時代に、未来を切り開いた、この吉田松陰先生と山田顕義学祖の理想が、この日本大学に、そしてこの危機管理学部に根付いています。皆さんは、この山田顕義学祖のように、この大学で信頼できる仲間をつくり、尊敬できる先生と出会ってほしいと思います。

 皆さんはまさに、「危機の時代」を生きています。世界を変えた新型コロナウイルスのパンデミックは終息しましたが、次なる新型インフルエンザはいつ世界を襲うかわかりません。
 覇権国家アメリカではトランプ2.0の時代を迎え、国際秩序が大きく変容しようとしています。対米依存の姿勢だけでは我が国も立ち行かなくなりつつあります。欧州ではロシアによる一方的なウクライナ全面侵攻により戦争が続き未だ終わりは見えません。中東ではイスラエルとハマスの戦闘が激化し、パレスチナで多くの市民の命が失われています。そうした戦争紛争の危機は、この日本を取り囲む東アジアにも影を落としています。一日も早く戦争のない平和な世界をつくるために私たちは何をすべきか、ともに考えましょう。
 先日のミャンマー大地震では死者が2000人を超えるなど甚大な被害が発生していますが、自然災害もグローバルな規模で激甚化しています。昨年の元旦に発生した能登半島地震の被災地にも、私たち教員だけでなく、ボランティアとして学生たちが被災者支援の活動をしてきました。災害大国の日本では、これから南海トラフ巨大地震や首都直下地震はいつ日本を襲ってもおかしくない状況です。
 このような世界のあらゆる危機に立ち向かうオールハザード・アプローチによる危機管理学によって、危機から人々の生命や生活を守るだけでなく、人々の幸せな生活、人生をデザインするための人道主義に基づいた、自由・人権・ダイバーシティを大事にした「新しい危機管理学」のリベラルアプローチのもとに、皆さんとともに幸せな社会を作りたいと思います。
 様々な問題に直面しながらも、新しく生まれ変わろうとしているこの日本大学において、歴史と伝統を大事にしながらも、新しい世界へ、未来に向けて新しい価値を創造し、幸せな社会を創り出しましょう。
 この幸福な未来を創り出すのは、他の誰でもない皆さん自身であり、私たちの行動なのです。
 この学生生活で、山田顕義学祖のように、「志を探し、志を立て」てほしいと思います。
 ここにいるすべての先生たち、職員の皆さんが、全力でそれを応援し、支えます。危機管理学の学びから、皆さんの生きる道は見えてくると思います。そして皆さんが立てた志や夢は必ずかなうと信じます。ここでともに学び、ともに幸せな社会を作りましょう。日本大学の理念「自主創造」のもとに、皆さんが創り出す新しい世界に期待しています。

 本日は誠におめでとうございます。

                                       令和7年4月8日
                                       日本大学危機管理学部長  
                                       日本大学大学院危機管理学研究科長
                                                   福田 充
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